


マラソンランナーは苦しくてイヤイヤ走っているのでしょうか?
それとも、湧き起こる悦びや多幸感、
達成感や満足感に魅せられているので
しょうか?
女性の体には「自然分娩」をする能力が本来的に備わっており、人生に数度の「至高の悦びの体験」でもあります。
そこには、「陣痛の痛み」を乗り越えるためのホルモン的な仕組みもちゃんと用意されています。
妊娠末期になると、胎児の頭がお母さんの骨盤出口に下降して、自然分娩の準備が進みます。
そして期が熟すると、胎児の側から信号を発して子宮の収縮(陣痛)を起こします。
自然分娩の始まりです。
子宮収縮の繰り返しによって少しずつ子宮の出口が開いて行き、ついに全開します。そして胎児は子宮からゆっくり脱出しつつ、柔らかく広がる腟内を下降します。赤ちゃんは、お母さんの産道の形に合わせて降りて来られるように、顎を引いたり、頭や体を上手に回転させながら進みます。
赤ちゃんが通過して生まれ出ると、子宮も腟も一気に収縮して元に戻って行きます。
■腟の伸縮性には驚くべきものがあります。
大きな赤ちゃんが通過しても、まったく無傷であったり、ごく小さな傷で済んだりすることは日々目にすることです。
現実は、「鼻からスイカ」とはまったく異なります。お母さんの体が自然に少しずつ順応して、子宮も腟も十分に伸縮するのです。
人間の体は実に上手くできているものです。
「陣痛の痛み」についても、心配して誇張され過ぎている面があります。
陣痛進行中は、ホルモンが脳に作用してお母さんを守ってくれます。陣痛ホルモンのオキシトシン(別名愛情ホルモンとも言われます)と、これに誘発されるセレトニンやエンドルフィン、さらにはドーパミンも陣痛緩和に作用します。
■つまり、「陣痛」は痛覚そのものの「裸の痛み」ではなく、脳に作用する様々なホルモンにオブラートされた「守られた痛み」なのです。
「案ずるより産むが易し」と言います。「易し」ではありませんが、案じ過ぎないことも重要です。
とは “ 愛を結ぶ “ こと。
自然分娩の魅力は、
赤ちゃんをしっかりと感じながら、
心と体を寄り添わせる悦び。
能動的に自分らしく、
愛しい命を産み出す喜び。
赤ちゃんと家族への、
愛と感謝を
深く実感できる幸せ。
パパにも大切な役割を
担ってもらうことができ、
ご夫婦、家族の絆も
ぐっと深まることでしょう。
(注 : 分娩所要時間には大きな個人差があります。とくに経産婦さんはスイッチが入ると急速に進み易く、正味は1~2時間程度というパターンもよくあります。)
■次に「陣痛」と「自然分娩」を乗り越える方策を考えてみましょう。
そのためには「陣痛を緩和させるホルモン」が、効果的に作用しやすい「ポジティブな心理状態や環境」を整えることが大変重要です。
妊娠中にご夫婦で赤ちゃんへの愛着を深め、ついに胸に抱く瞬間への期待を高める。
“ 私のお産 “ “ 夫婦の出産 “ という自覚。能動的に出産に取り組む気持ち。
ご夫婦で出産に臨み、ともに頑張っている赤ちゃんをイメージして陣痛を受け入れる。
適切な呼吸法によって上手に陣痛をのがし、自身と赤ちゃんに酸素を行き渡らせる。
ご夫婦の気持ちを支え、出産までの道筋を適切に誘導する、助産師の温かいサポート。
お産中にも自分の気持を伝えられるように、妊娠中から助産師チームと築く信頼関係。
※立ち会い出来ない場合や、ひとりの方が頑張りやすい方も、離れていても出産への思いは通い合っている、と思えることがプラスに作用します。
■逆に、以下の場合は、「陣痛緩和ホルモン」が作用しづらくなります。
過度な不安や恐れ。後ろ向き、逃げ腰な気持ち。
妊娠出産に思い入れがない。前向きになれない。
夫婦でイメージングや呼吸法などの準備不足。
分娩中のサポートが薄く “ 放って置かれてる “ 感。
“ 患者扱い “ で自分の出産という意識が持てない。
■さらに、分娩室の環境も重要な要素です。
夫や家族も落ち着ける、プライベートな空間であること。
個室内にトイレもあり、自由に落ち着いて過ごせること。照明の調節も効果的です。
室内やベッド上でも自由に体を動かすゆとりがあり、赤ちゃんのスムースな下降を助けられる。
これらの設備的な環境も、分娩を程好く促進し、「陣痛緩和ホルモン」の働きを高めるのに大いに役立つのです。
出産直後の幸せを遠慮なく家族で分かち合うためにも、LDR(個室分娩室)の環境は理想的です。
次の「自然分娩のイメージ」もぜひ参考にしてください。
「自然なお産」は、本来的に女性に備わった能力であり、恋にも似た悦びの営みでもあります。 赤ちゃんへの愛情、前向きなイメージが、脳に作用してホルモンの分泌を促し、お母さんと赤ちゃんを守ってくれます。
産科学的な研究によって、胎児側から信号を発して「陣痛」が始まることが分かっています。
陣痛~お産は、生まれ出でようとする赤ちゃんの意志を感じ、その決意に子宮が応え、お母さんが寄り添い、時には苦難をも共に乗り越えていく(ついに恋人を胸に抱く時を知り、自然の荒波に身を任せる)過程です。
ママもパパも、人によっては生まれて初めて「神様」を意識し、信じて身を委ねる時となるかも知れません。(神様は、その人に乗り越えられない試練は与えません。)
陣痛の波と、合間の休息の時が交互に訪れます。お母さんも呼吸を整えて赤ちゃんのペースを感じながら意識を集中します。
上手に出てくる赤ちゃんもいれば、上を向いたり横を向いたり回り道をする子もいます。それでもお母さんの温かい胸に抱かれたい一心で、それぞれに懸命にがんばっているのです。
お母さんは時には辛抱強く待たなければなりません。赤ちゃんの動きを身体で感じて呼応して、お母さんも右を向いたり左向きになったり、時にはしゃがんでみたり四つん這いになったり。お母さんの自然な動きが赤ちゃんを助けます。(そのための「LDRフリースタイル分娩」です。
そして、赤ちゃんがようやく産道の出口を探し当ててこの世界に生まれ出る。その瞬間の何とも言えない解放感、温かさ、そして至福の充足感。
元気な第一声を聞く、おへそで繋がったまま赤ちゃんを胸に抱く。本当に温かい、小さい、でも重たい。こんなにかわいい、愛しい生きものが世界に存在したのか。
こんな至福の時が、感覚が、人生に存在したのか
すべてを感じてください。
自由で自然なお産を感じてください。
もちろん多くの方が初体験ですし、有ってもせいぜい数回の経験でしょう。マザーズの元気な助産師たちが、喜んで皆さんのお手伝いをさせて頂きます。
そしてマザーズのお産では、この母と子の共同作業にパパが加わり、大切な役割を受け持っていただけるようにお手伝いします。
頑張ったパパには大きな感動とともに、ママへの感謝とリスペクトの気持ちが溢れることでしょう。
(実際、涙が止まらないのはママよりパパが圧倒的に多いんです。)
パパにも赤ちゃんを裸ん坊抱っこする体験をして頂きます。(これらは実は、パパを「イクメン」に育てるというマザーズの策略でもあります。)
自然なお産は「ランナーズハイ」に似た感覚でもあります。ランナーズハイが独りの世界なのに対して「自然なお産」は赤ちゃんとママ、二人の世界。
マザーズではさらに、パパや時には上のお子さまもここに加われることを理想としています。
自然なお産を通して、恋も愛も神様も感じてください。ご夫婦、ご家族の絆もぐっと深めていただけることと思います。
「無痛分娩」では、帝王切開手術の10倍~20倍の麻酔薬を母体に投与しますので、安全のため、ベッド上臥床して身体の動きを最小限とし、血圧計や心電図モニターなどを装着した状態で「分娩」が終わるのをじっと待ちます。
最後に少し息んでみますが、あまり力は入らないので、多くは吸引分娩になります。
無事に分娩を「通過」できれば、それはそれで喜ばしいことです。「自然分娩の悦び」を体験できないのは残念ですが、無痛分娩を選ばざるを得ない方にとっては、大変すばらしいことですし、これも一つのお産の形だと思います。
ただし、麻酔は完全とは限りません。
積極的な気持ちを欠いている(陣痛緩和ホルモンが作用しづらい)と、かえって少しの痛みを激痛と感じてしまう恐れがあります。
無痛分娩は、麻酔事故による母児の重大な危険をはらむため、欧米では殆んどが周産期センターで麻酔科専門医が行っています。日本では小規模施設で産科医が扱うことが増えているため、学会や医会で安全管理のルール作りが急がれています。
医会での議論から、安全確保のための2つの重要ポイントが見えて来ます。
1.無痛分娩の進行中は常に心電図、自動血圧計、酸素飽和度計など、全身モニターを装着して監視を続ける。
2.毎回の麻酔薬注入ごとに少量投与テストを繰り返し、頻回に安全確認を行う。
無痛分娩を選ばざるを得ない妊婦さんが《施設に確認しておくべき点》《ご自身が了解しておくべき点》は以下の通りです。
上記1と2を励行している施設か、あらかじめ質問して確認する。
夜間や休日にも対応してくれるか?(お産の進行途中に麻酔だけ終了したり、時間切れで緊急帝王切開になったりしないか)
計画分娩(緊急帝王切開率が上がる)になるのか?自然陣痛を待ってくれるのか?
妊婦さんの心の準備として、こうした諸々の事態が起こってもパニックにならないように、「いざとなったら自力で産む覚悟」をしっかり持っておく必要があります。
また、手軽に安くできるような無痛分娩は危ないと認識して、しっかりした料金設定と実績を伴う、信頼できる規模の施設を選ぶようにされてください。
ご自身の必要性とリスクをよく考えて、予め確認すべきは確認し、十分な知識と覚悟を持って無痛分娩に臨んでください。
■まず、ハイリスク妊娠となる方は、高次医療機関(大学病院や総合病院)での分娩を選ぶ必要があります。異常分娩への備えを第一に考え、ご自身と赤ちゃんの安全を何より優先してください。
この際には、「陣痛を乗り越える」「しあわせなお産」というテーマは優先課題ではありません。大病院では異常分娩への緊急対応に全力を尽くしていますから、正常分娩となる場合のサポートは少なくてもやむを得ません。
■大学病院や総合病院で自然分娩をされる方は、「自然分娩」と「陣痛」をよく理解してイメージングを大切に、ご夫婦で心身の準備を心がけてください。
■麻酔の怖さよりも「陣痛」の恐さがずっと勝っていて「しあわせなお産」どころではないという方や、今回の妊娠、出産に前向きになれない(陣痛緩和ホルモンが作用しづらい)というケースでは、「無痛分娩」が有効な選択肢でしょう。
ただその際にも、諸事情によって麻酔が出来なかったり、間に合わなかったり、効果が不十分だったりしたときのために、「いざとなったら開き直って頑張る」という覚悟は持っておきましょう。
「無痛分娩」に関しては特に安全第一に、信頼できる施設をよくよく選ぶことが、決定的に重要です。
■大多数の方は、普通に「自然分娩の施設」を選ぶことになるでしょう。
けれども「自然分娩の施設」とは言ってもさまざまです。
施設によっては “無痛分娩はできない” あるいは単に “自然にまかせる” というだけの消極的な意味での「自然分娩」の施設も多数あります。(普通の分娩施設)
他方では、自然分娩の素晴らしさを大切にして、「陣痛」を一緒に乗り越える環境を整えた、積極的な「自然分娩」の施設もあるわけです。(自然分娩の「専門施設」)
■自然分娩の専門施設ではなく、普通の分娩施設で出産される場合は、大きな病院での出産と同様の準備が望まれます。
イメージングと呼吸法、ご主人とのチームワークをしっかり準備することで、陣痛緩和に十分役立つ可能性があります。
まとめ ——「陣痛」から見る分娩施設
以下の基準に当てはまる方は「ハイリスク」に該当するため、当院での分娩をお受けできません。高次医療機関での分娩をお勧め致します。
診察にて異常が発見されたり、妊娠経過中に異常が発生する場合もありますので、その際は医師の指示にしたがってください。
自然の力という
ものは、本当によく
できていますね。